2004年5月11日火曜日

HP12C, 散人がいまだに愛用する電卓



最近 iPod を買ったりして「小物」づいている。でも小物を云えばこれを忘れてはいけない。Hewlett-Packard の電卓 HP12C である。20年来これを愛用しており、今さら替えるわけにはいかない。いまだの細々と生産を続けているとのことだが、どこがすごいのかを説明する。電化製品やパソコンなども、やはり機能や性能ばかりじゃないのだ。

HP12C はそれほど日本ではポピュラーでないので、みたこともないという人もいるかも知れない。写真はこれ↓




見るからに古めかしい電卓であるが、その使用感がまず すばらしい。相当力を入れないとキーは押せない。またキーを押すたびに「プチッ、プチッ」と音がして、一つ一つの数字がいかに大事であるかを実感させてく れる。いくら指が太くとも間違えて別のキーを押すことはない。ビジネスでは数字がすべてなのであり、間違えればそれでお仕舞いなのだ。

次にすごいのは、「逆ポーランド方式」という演算指定方式。1+1=2 を計算させるのに普通の電卓では記号通りに打ち込むが、HP12C ではそういうことはない。「1 ENTER 1 + 」で答えが出るのだ。つまり日本語通り「1に1を足す」とキー操作をするわけ。これがまたたまらない。会議なんかで「ちょっと電卓貸して」なんか云われれ ば、それこそ嬉々として貸してやる。誰も使えないのだ。たまらない優越感。

それから金融計算なんかさせると、延々と時間がかかるのも良い。複雑な計算をさせているのだから、簡単に答えが出てしまっては有り難みが薄れるのである。20秒ぐらい待ってようやく答えが出るが、待った甲斐 があったというもの。答えの重みが違うのである。

でも正直に云うと、遊びでは別だ実際のビジネスの現場 で HP12C の NPV や IRR の計算をやったことはない。実際のビジネスはもっとアバウトなものだからだ。あんな機能を使うのは一部の金融関係者だけだろう。でもこの機能がついている だけで、普通のビジネスマンも最先端のビジネスマンであるという「気分」に浸れるのである。計算速度が遅いのはまったく問題ない。普通の人はせいぜい足し 算、引き算それにかけ算ぐらいにしか使わないからだ。

電池が持つのも驚異的だ。ほとんど十年間ぐらい電池交 換の必要はなかった(あまり使ってないこともあるが)。でもこれだけ長い期間愛用すると、今さら他の電卓に替えるわけにはいかない。あの「プチッ、プ チッ」がたまらないのである。

要は、HP12C は長年かけて「神話作り」に成功したと云うこと。神話となるのは、神話を信奉する人達がその神話をとても居心地が良いと感じているからに他ならない。神話 であろうと無かろうと、とにかく HP12C は使いやすく、ユーザーに強い満足感を与えてくれるのである。

HP12C の博物館もあるよ→ http://www.hpmuseum.org/hp12c.htm
 

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